非永住者の送金に対する課税
Posted date:2024.10.11 Author:Eisuke Yasuda
当事務所では、税務上の非永住者の方から、送金課税に関する相談を頻繁に受けますが、この送金課税に関しては、初めての方が理解しにくい論点がいくつかあり、この記事で解説します。
この記事は、当事務所による英文記事の日本語訳であり、当該英文記事は本ウェブサイトの全記事の中で一番アクセス数が多く、皆様の関心高さが伺えます。
非永住者
「非永住者」とは、居住者のうち、過去10年間に日本に住所または居所を有していた期間の合計が5年以下の外国人のことです。非永住者は、非永住者でない居住者(いわゆる居住者)とは異なる税制上の規定が定められており、それが、国外源泉所得に関しては日本に送金した部分だけを課税する、いわゆる送金課税になります。この送金課税には、以下で解説するように、いくつか細かい注意点があります。
国外源泉所得と送金原資との関係
所得税法は、次のように規定しています。
所得税法施行令第十七条(非永住者の課税所得の範囲)
4 法第七条第一項第二号に規定する国外源泉所得(以下この項において「国外源泉所得」という。)で国内において支払われ、又は国外から送金されたものの範囲については、次に定めるところによる。
一 非永住者が各年において国外から送金を受領した場合には、その金額の範囲内でその非永住者のその年における国外源泉所得に係る所得で国外の支払に係るものについて送金があつたものとみなす。ただし、その非永住者がその年における国外源泉所得以外の所得(以下この項において「非国外源泉所得」という。)に係る所得で国外の支払に係るものを有する場合は、まずその非国外源泉所得に係る所得について送金があつたものとみなし、なお残余があるときに当該残余の金額の範囲内で国外源泉所得に係る所得について送金があつたものとみなす。
つまり、国外源泉所得と送金の原資には直接的な関係はなく、年間のトータルで、国外源泉所得と国外払いの国内源泉所得、および送金額の関係を見る必要があります。
送金課税問題に関するケーススタディ
事例1:アリスのケース
- 英国国籍のアリスは、2024年3月まで英国居住者であり、2024年4月から日本居住者となった。
- アリスは2024年3月まで英国の会社から給与所得を得ており、英国の銀行口座に貯金していた。彼女は英国を出国する前にこの会社を辞めた。
- 2024年4月、アリスは生活資金として英国の銀行口座から日本の銀行口座に100万円を振り込んだ。
- アリスは日本に来てから2024年中に収入がなかった。
このケースでは、2024年4月に日本居住者となった後は、国内・海外を問わず収入がないため、送金には課税されません。
例2:ボブの場合
- 英国国籍のボブは、2024年3月までイギリスの居住者で、2024年4月から税務上の日本の居住者になった。
- ボブは2024年3月まで英国の会社から給与所得を得ており、英国の銀行口座に貯金していた。彼は英国を離れる前にこの会社を辞めた。
- ボブは2024年4月に生活資金としてイギリスの銀行口座から日本の銀行口座に100万円を送金した。
- ボブは日本に来てから2024年中に日本での収入はなかったが、米国で不動産収入があった。2024年(4月以降)の収入は500万円で、アメリカの銀行口座に保管している。
この場合、英国から送金された100万円が課税対象となります。実際には、英国の貯蓄と米国の不動産所得は関連がありませんが、送金と同じ年に外国源泉所得がある場合は、送金したものとみなされます。
例3:チャーリーの場合
- 英国国籍のチャーリーは、2024年3月まで英国居住者であり、2024年4月から税務上の日本居住者になった。
- チャーリーは2024年3月まで英国の会社から給与所得を得ており、英国の銀行口座に貯蓄している。
- チャーリーは2024年4月から英国の同じ会社で日本からリモートワークを続けており、給与は引き続き英国の銀行口座に支払われている。
- チャーリーの2024年4月から12月までの給与総額は1500万円。
- 2024年4月、チャーリーは生活資金として英国の銀行口座から日本の銀行口座に100万円を移しました。
- チャーリーさんは米国で不動産所得があり、2024年(4月以降)の所得は500万円で、米国の銀行口座に保管している。
この場合、英国から送金された100万円は、海外で支払われた国内源泉所得とみなされ、送金の有無にかかわらず課税されます。また、不動産家賃(国外源泉所得)は、送金額が海外で支払われた国内源泉所得の額を超えていないので課税されません。
上記3つのケースは、日本に居住するようになった時期、海外送金の時期と金額、日本企業から給与を受け取っていないことなど、共通点が多くありますが、それぞれ税務上の取り扱いが異なります。
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上記の概要は十分に役立ちますが、実際の税額の計算や確定申告書の記入ははるかに複雑です。必要に応じて専門家に相談することをお勧めします。安田会計事務所は、外国企業や外国人への会計・税務サービス、英語サービスの提供で豊富な経験を持っています。詳細についてはお気軽にお問い合わせください。