国外事業者が日本の消費税課税事業者となるケース①役務提供取引
Posted date:2023.02.18 Author:Eisuke Yasuda
消費税の課税取引
消費税は、国内取引に対して課税されます。役務提供の場合、役務の提供が行われた場所が国内であれば、国内取引になります(消費税法第4条第3項第2号)。
役務提供取引の内外判定
電子書籍・音楽・広告の配信などのインターネット等を介して行われる役務の提供(電気通信利用役務の提供)に関しては、原則として、「役務の提供を受ける者の住所等」が国内にある場合、当該役務の提供は消費税の課税対象となる国内取引に該当します。
国外事業者に対する具体的な課税方式
まず、電気通信利用役務の提供については、「事業者向け電気通信利用役務の提供」とそれ以外のものとに区分され、両者で異なる課税方式が適用されます。
事業者向け電気通信利用役務の提供
「事業者向け電気通信利用役務の提供」の場合、役務の提供を受けた国内事業者に消費税の申告・納税義務が課されます(リバースチャージ方式)。当該役務の提供を行う国外事業者は、当該役務の提供に際して、役務の提供を受けた国内事業者に消費税の申告・納税義務が課される旨を、あらかじめ表示しなければなりません。
「事業者向け」に該当するかどうかは、役務の性質又は当該役務の提供に係る取引条件等から当該役務の提供を受ける者が「通常事業者に限られるもの」とされています。つまり、事業者以外の消費者も利用することが想定されているサービスは、ここでいう「事業者向け」には該当しないことになります。
消費者向け電気通信利用役務の提供
上記の「事業者向け」に該当しない電気通信利用役務の提供は、「消費者向け電気通信利用役務の提供」となります。消費者向け電気通信利用役務の提供については、当該役務の提供を行う国外事業者が申告・納税を行う必要があります。
国内に住所がない国外事業者については、申告書・届出書の提出や税金の納付等、国税に関する事項を行うために納税管理人を選任する必要があります。
なお、国外事業者が提供する「消費者向け電気通信利用役務の提供」については、当該役務の提供を受けた国内事業者の仕入税額控除が原則として制限されますが、登録国外事業者から提供を受けるものについては仕入税額控除の対象となります。(登録国外事業者の登録申請手続)
当該国外事業者登録の制度は、インボイス制度導入後は適格請求書発行事業者登録の制度に吸収され、2023年9月1日時点で外国事業者登録をしている者は、適格請求書発行事業者として登録したものとみなされます(2023年10月1日施行消費税法附則第45条第4項)。
まとめ
課税当局から見て、国内取引となる役務の提供者が国外事業者である場合、実際に有効な申告・納税を確保することには、通常の国内事業者に比べて困難が伴います。そのため、サービスの受領側にインセンティブを与えることで、効果的な納税確保の実現を図っています。
つまり、事業向け取引の場合、通常、サービスの受領側が仕入税額控除をとりたいので、サービスの受領側に申告納税義務を課します(リバースチャージ)。こうすることでサービスの受領側は仕入税額控除をとれます。
消費者向けの場合、消費者の場合は仕入税額控除を気にしませんが、事業者が消費者向けサービスを利用する場合もあり、この場合は、リバースチャージではなく、登録国外事業者(インボイス制度導入後は適格請求書発行事業者)から提供を受けるサービスについてのみ、仕入税額控除の対象となります。